古家 正暢(ふるや・まさのぶ)さん
学校教員
「我がクラスの歌はUnder the same sky」
(原文のまま掲載しています)
卒業遠足で訪れたディズニーシー入口で私は叫んだ「みんなで考えたアフリカ大陸はあんなに大きいんだ!」 そこには水溢れる青い地球が回転し、半球をアフリカ大陸が占めていた。面積だけを比較したなら日本は、ジンバブエ一国よりも小さい。そんな大きなアフリカのために日本ができることを生徒共に考えた。
地理的にも心理的にも遠いアフリカに対して、ネガティブな未来予想図であるならば、誰でもすぐにでも描ける。旱魃と砂漠化、エイズ・マラリア等の感染症の蔓延、稀少な鉱産資源をめぐる子ども兵士を巻込んだ紛争、難民やストリートチルドレン等の絶望的な貧困、これらをもとにアフロペシミズムを語ることは容易だ。
このアフリカの難問を前に「もう手遅れだ。今さら自分には何もできない。」と考えることを放棄したり、立ちすくんでしまう生徒もいた。また「これまで数々の援助を受けてきたにもかかわらず、事態が改善しないのは、アフリカ自身にも問題があるからだ。かえって何もしない方がいいんだ。」とアフリカ支援に批判的意見を述べる生徒もいた。
それでも「この痩せ衰えたアフリカの子どもたちを前に、私たちは何もできないのだろうか」 高校受験を前に自分のことだけで頭が一杯になっている生徒に敢えて問うた。
その中で生徒は「先進国の豊かさ追求が気候変動を引き起こしているのではないか」「気候変動はこれまで先進国が援助してきたもの全てを台無しにしてしまう」「気候変動の影響を真っ先に受けるのは最貧国だ」「先進国に生きる私たちの努力こそが、アフリカの人々が幸せに生きる未来を創造できる」「私たちは、今の豊かな生活から降りることも覚悟しなければならない」と地球規模の『気候変動』問題をアフリカ・日本と関連づけて論じるものが目立った。一年次から“Think Globally Act Locally”という名の社会科通信を発行し、自分の身近なところで何ができるか、自分にできることは何かと問うてきた中での回答であった。
特に豊かな生活から「降りる」という覚悟は、アフリカと日本とが同じ地球で生きているのだということを理屈でなく我が事として捉えたが故の回答であると私は確信する。
このような折、我がクラスの創作曲が音楽コンクールで優秀賞を頂くという栄誉を得た。曲名は“Under the same sky”という。その歌詞には「君も見ている この世界から 目をそらさずに 同じ空の下 ぼくたちは生きている つないだ手を離さないで 空がぼくらに強さをくれるから」とある。
次代を担う子どもたちは私たちの想像以上に未来を考えていると確信した。今後もこの子どもたちと共に持続可能な社会を築くための教育をしていきたいと心に誓う。
審査員コメント
●アフリカ理解を広げる、教員の立場と、学生・生徒の反応が、具体的に描けていていいと思いました。PR