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アフリカ・エッセイコンテスト受賞作品を紹介
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専業主婦
小山 裕子(こやま・ゆうこ)さん 

「幸せも載せて輸出したい―アフリカへ渡る中古車」
 
(原文のまま掲載しています)


 四年前子どもが小学校に入学するに当たって、マイカーを買い替えた。そのときまで乗っていたのはコンパクトカー。息子が産まれたのに合わせて買った車で、子どもの初めての遠出に使ったり、幼稚園への送り迎えにフル活動したりして思い出の多い車だった。

 自動車販売店で、古い車と交換に新しいセダンの引き渡しを受けることになった。新者との対面はうれしかったが、古い車との別れは寂しかった。同じことを思ったのか息子が「この車はどこへ行くの?」と尋ねてきた。

 中古車の行く末など知らなかった夫や私に販売店の営業マンが助け舟を出した。この車は船に乗ってアフリカに渡るかも知れないよ。ライオンやゾウたちと仲良く暮らして行くから、独りぼっちにはならないよ」。息子は納得したらしく「じゃあこの車は寂しくないんだね」と笑顔を見せた。

 営業マンの機転を効かせた説明には感謝したが、息子とは逆に私の中に納得できない気持が芽生えてきた。

 営業マンが後で私たちに説明してくれたところによると、アフリカ向けに輸出される車は「走行距離が二十万キロを越えていてもちゃんと売れる」のだという。帰宅してインターネットで調べてみると、確かにそれらしき記述が見られた。日本で売られる中古車よりもずっと長い距離だ。

 モノを大切に使うのはよいことだ。ただ、車の場合は排ガスという環境にかかわる問題が絡んでくる。走行距離が長い車は古い車である。日本で環境規制が緩い時代に作られた車や、大気汚染物質を出さない止めの機能が壊れた車も輸出されていないのか。そんな車ばかりが輸出されていく中でアフリカの空気は確実に汚れていくのではないか。

 もう一つの懸念は、アフリカで故障し動かなくなった車は最終的にどうなるのか、ということだ。日本の自動車メーカーのサービス網もなくはないだろうが、きっとそれは新車か年数の浅い車の修理を前提としたものだろう。壊れた中古車をなおすための技術者も充分確保されているとは思えない。

 アフリカで壊れた日本の中古車は現地で産業廃棄物になっていくのだろう。いったいそれは誰が処分するのか。アフリカの大地にスクラップの山が重なる様子が想像された。

 こんな風に考えると、私達の幸せを支えたマイカーが、最終的にはアフリカの環境を壊している面も否めない気がする。たまたま車から想像を広げていったが、他のことでも日本人の暮らしがアフリカの環境をどこかで壊しているのではないか。

 日本の自動車メーカーはエコカーの開発に熱心だ。これは大切なことだ。これに加え、アフリカなどに輸出する中古車の環境対応や安全性向上にも取り組んで欲しい。日本の家族を幸せにしてくれたマイカーが遠いアフリカの大地でも、現地に住む人を幸せにして欲しいと願わずにいられない。


審査員コメント
●わかりやすい、日常の生活から日本とアフリカの関係性、中古車から環境問題へ素直に展開された。広くこのエッセイを紹介したい気持ちになった。
●自家用車の買い替えをきっかけにした、中古車の行方、公害・環境問題とのリンク、中古車を売り、輸出する側の責任が、分かりやすく描けていました。


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2008年5月に横浜で開催される第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)に向けて、アフリカの人の声を届けます。
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